法人税や消費税など、合わせて約1億5700万円という巨額の脱税額、さらにSNSで大きな影響力を持つ人物であることから、「実刑の可能性はあるのか」「悪質性はどの程度なのか」という点に、世間の注目が集まっています。
本記事では、起訴内容を整理した上で、一般的な税法・判例の考え方を踏まえながら、実刑の可能性や悪質性の評価について、事実と推測を明確に分けて解説します。
事件の概要と起訴内容
東京地検特捜部によると、宮崎被告は代表を務める広告代理業「Solarie」を通じて、2021年1月期と2024年1月期までの2年間にわたり、架空の業務委託費を計上するなどの方法で所得を隠していたとされています。
その結果、隠した所得は約4億9600万円に上り、法人税約1億2600万円、さらに2022年2月から2024年1月までの消費税約3100万円、合計で約1億5700万円を免れたとされています。
この行為について、東京国税局査察部が告発し、特捜部が在宅起訴に踏み切りました。
また、脱税を手助けしたとして、知人2人も在宅起訴されています。
架空の業務委託費という手口の評価
今回問題とされたのは、「架空の業務委託費」を計上する手口です。
実際には存在しない、あるいは業務実態が確認できない委託費について、虚偽の領収書を作成・計上し、所得を圧縮するという方法は、税務調査において典型的な不正行為の一つとされています。
単なる経費計上ミスや解釈の違いとは異なり、架空経費は「故意性」が強く疑われやすい点が特徴です。
この点は、刑事責任を判断するうえで重要な要素となります。
脱税額1億5700万円はどれほど重いのか
一般的に、税務署が刑事告発に踏み切るのは、次のようなケースが多いとされています。
・脱税額が高額である
・不正の手口が巧妙、または計画的である
・長期間にわたり不正が続いている
・修正申告や納税が調査段階で行われていない
今回の約1億5700万円という金額は、個人や中小企業の脱税事件としてはかなり大きい部類に入ります。
そのため、国税当局が「悪質性が高い」と判断した可能性は高いとみられます。
実刑の可能性はあるのか
ここで最も関心が集まるのが、「実刑になるのか」という点です。
法人税法違反や消費税法違反の場合、法定刑としては「10年以下の懲役または1000万円以下の罰金」、あるいはその両方が規定されています。
ただし、実際の量刑は以下の要素を総合的に考慮して判断されます。
・脱税額の大きさ
・不正の手口の悪質性
・反復性、継続性
・被告人の反省の有無
・修正申告と納税の状況
・前科、前歴の有無
過去の判例を見ると、脱税額が1億円を超える場合でも、初犯であり、全額納税や重加算税を含めた支払いが済んでいる場合には、執行猶予付き判決となるケースも少なくありません。
一方で、計画性が高く、長期間にわたり不正を繰り返していた場合には、実刑判決が言い渡された例も存在します。
そのため、現時点で「必ず実刑になる」「実刑はあり得ない」と断言することはできません。
実刑の可能性は否定できないものの、執行猶予付き判決となる余地も残されている、というのが一般的な見方です。
なお、この部分は判例を基にした一般論であり、最終的な判断は裁判所によって下されるものである点には注意が必要です。
年収5億円超と報じられる収入規模の影響
宮崎被告については、年収が5億円を超えていたのではないか、という報道も見られます。
仮にこれが事実であれば、「十分な納税能力があったにもかかわらず脱税を行った」と評価される可能性があります。
刑事裁判においては、「生活のためにやむを得ず」という事情は考慮されやすい一方、高額所得者による脱税は「悪質性が高い」と見なされやすい傾向があります。
この点は、量刑判断に影響を与える可能性があります。
脱税金の使途と社会的評価
関係者によると、不正に得た資金は、事業関連の支出やブランド品の購入などに使われていたとみられています。
社会的には、「生活に困っていたわけではない」「ぜいたく品に使われていたのではないか」という印象を与えやすく、インフルエンサーとしてのイメージにも大きな影響を及ぼしています。
SNSで影響力を持つ人物であるからこそ、「模範的であるべきだった」という厳しい視線が向けられているのも事実です。
宮崎麗果被告のコメントと反省の姿勢
宮崎被告は自身のSNSで、「深く反省しております。専門家の助言のもと、必要な修正申告および納税に速やかに対応して参ります」とコメントしています。
裁判では、この反省の姿勢がどの程度具体的な行動として示されているか、つまり実際に修正申告と納税が完了しているかどうかが重視されることになります。
形式的な謝罪にとどまるのか、実質的な償いが行われているのかは、量刑において重要なポイントです。
悪質性は高いのか
今回の事件について、悪質性を判断する材料を整理すると、次のようになります。
・脱税額が非常に高額である
・架空経費という故意性が疑われやすい手口
・複数年にわたり不正が続いていた
・第三者が関与していた可能性
これらを踏まえると、税務当局が「悪質」と判断した理由は理解できる内容です。
一方で、初犯である可能性や、起訴後の対応次第では、裁判所の評価が変わる余地もあります。
今後の焦点と読者が注目すべき点
今後、裁判で注目されるポイントは以下の点です。
・修正申告と納税がいつ、どこまで行われたのか
・顧問税理士や関係者の関与の実態
・不正の主導者が誰だったのか
・再発防止策が具体的に示されるか
これらの要素が明らかになることで、実刑か執行猶予かという判断も見えてくると考えられます。
まとめ
宮崎麗果被告の脱税事件は、脱税額の大きさと社会的影響力の高さから、非常に注目度の高い事案となっています。
現時点では、実刑の可能性を完全に否定することはできないものの、判例上は執行猶予付き判決となる余地も残されています。
最終的な評価は、裁判の過程で明らかになる事実と、被告の具体的な対応次第と言えるでしょう。