大阪市西成区で発覚した「替え玉連続殺人事件」。
この事件の主犯とされるのが、中国出身の尹麗娜(イン・リナ)です。
彼女は2001〜2002年にかけて、遺産相続を目的に3人の男性を殺害した罪に問われ、2013年に無期懲役が確定しました。
本記事では、イン・リナの生い立ち、日本へ来た理由、事件の経緯、逃亡時代の生活、さらに共犯者である越田俊昭の現在について、わかっている情報をまとめてご紹介します。
イン・リナの生い立ち

尹麗娜(イン・リナ)さんは中国・北京で生まれました。
詳しい家庭環境や幼少期の様子については明らかになっていませんが、金銭に強い執着があったとされ、これが後の犯行の背景にあった可能性があります。
中国での職業や生活歴についても不明な点が多く、素性は謎に包まれています。
しかし、少なくとも日本に渡る前の人生の中で、計画性や金銭取得への強い思いを培ってきたと考えられています。
日本に来た理由
イン・リナさんは42歳の頃、日本人男性と結婚し来日しました。
この結婚は、形式的なものであった可能性が高く、日本への渡航手段を得ることを目的としていたと見られます。
その後すぐに離婚し、大阪市西成区で「和風スナック」を開業しました。
スナック経営は比較的順調で、地域の常連客やホームレスとも交流を持つようになり、人脈を広げていきました。
この店舗でのつながりが、のちに共犯者となる越田俊昭さんとの関係にも繋がっていきます。
財産目当ての犯行計画

スナックの経営が軌道に乗ったものの、イン・リナさんはより大きなお金を求めるようになります。
そこで目を付けたのが、大阪市西成区に約380坪もの土地を所有していた加藤善一郎さん(当時77歳)でした。
加藤さんとの再婚
イン・リナさんは、遺産目当てで加藤善一郎さんと再婚します。
加藤さんには3人の娘がいましたが、家族には知らされることなく再婚手続きが進んでいました。
しかし、加藤さんは高齢ながら元気で、自然に遺産を得るには時間がかかる状況でした。
ここでイン・リナさんは、より早く確実に遺産を手に入れるため、恐ろしく巧妙な手口を考え出します。
替え玉を使った遺産操作
イン・リナさんは、糖尿病を患っていたホームレス男性を探し出し、加藤さんの替え玉として病院に入院させました。
その後、インスリンを与えず死亡させ、あくまで病死として処理させたとされています。
この過程で、遺産相続に必要な
・印鑑証明の偽造
・住民票の移動
などを使い分け、法務局の職員をも欺きました。
さらに、加藤さんの娘たちの住民票を勝手に移動させ、本人たちが知らぬ間に遺産放棄の形を作り上げました。
最終的に、加藤家の土地をすべて自分のものとしたのです。
この計画の中で利用された「相続関係者」も替え玉であり、替え玉は共犯者の越田俊昭さんが用意したとされています。
事件発覚のきっかけ
2002年4月
東北で暮らしていた長女・加藤和子(仮名)さんのもとに
「提出された転入届に記載ミスがある」と役所から連絡が入ったことが始まりでした。
和子さんには身に覚えがなく、調べてみると
・父が2ヶ月前に死亡していた
・1年ほど前に中国人女性と再婚していた
・死亡届は石川県で提出
・検死写真は別人
という異常な事実が次々と発覚します。
そして、父が所有していた土地はイン・リナさんへ相続されていることが判明。
ここで和子さんは警察へ相談し、事件が表面化しました。
イン・リナの逃亡生活
事件が発覚すると、共犯者である越田俊昭さんが窃盗容疑で逮捕され、取り調べで全容が明らかになります。
しかし、イン・リナさん本人は姿を消し、日本全国に指名手配されました。
逃亡期間は約5年に及びます。
その間、イン・リナさんは
・偽名を利用
・転々と移動
・地域住民になりすまし
ながら逃亡を続けていたとされます。
事件から5年後、雑誌の特集を見た男性からの通報がきっかけで潜伏先が判明し、逮捕に至りました。
逮捕時は、アパートの部屋から外出してきたところを取り押さえられています。
バラバラ遺体の存在
替え玉として最初に目を付けられた高木清さんは、血糖値が改善したため利用価値を失われ、殺害されたとみられています。
その後、バラバラ遺体として発見されましたが、明確な証拠がなく、殺人として立件はされませんでした。
判決
大阪地裁は
・遺体処理の痕跡
・血痕
などを重要視し、イン・リナさんが殺害に関与した可能性が高いと判断。
身代わり男性への薬投与をせず死亡させた行為については殺人が認められました。
その結果
主犯:尹麗娜(イン・リナ) 無期懲役
共犯:越田俊昭 懲役15年
という判決が確定し、2013年11月に最高裁で確定しました。
なお、加藤善一郎さんの遺体はいまも見つかっていません。
共犯者・越田俊昭の現在
越田俊昭さんは
イン・リナさんが経営するスナックの常連客で、犯行計画に協力した人物です。
彼は糖尿病のホームレス男性や替え玉の確保、監禁場所の手配など、実行面で大きく関わっていました。
その結果、懲役15年の判決を受けています。
現在については公的な情報は公開されていませんが、刑期が満了している可能性が高く、すでに出所していると推測されます。
ただし、事件内容の重大さから、社会的な表舞台で活動しているとは考えにくく、所在は不明です。
まとめ
イン・リナ事件は
・替え玉
・偽装工作
・遺産乗っ取り
など、極めて巧妙な手法を使った連続殺人事件でした。
日本へ来た理由は不明な点も多いものの、金銭への執着がその動機の中心にあったと考えられます。
また、逃亡中は約5年も捕まらずに生活していたことから、計画性の高さもうかがえます。
共犯者の越田俊昭さんについても、すでに刑期を終えている可能性がありますが、現在の状況は確認されていません。
いまだ見つからない遺体や動機の詳細など、謎が残る部分も多く、現在も注目され続けている事件です。
本記事は、事件を正確に振り返りつつ、背景にある社会問題や課題について考える一助になれば幸いです。
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